2017年6月1日木曜日

THAAD配備は強大国の角逐まねく/文在寅政権の対北政策④

――米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD/サード)韓国配備が決まり、北はもちろん、中国との関係も相当デリケートな状況になっています。この問題についてはどのように解決していけばいいと?
 
518日、光州民主化運動37周年記念式典で、民主化運動を象徴する歌「あなたのための行進曲」を歌う文在寅大統領ら=青瓦台HP
■痛恨の歴史を繰り返してはならない
いまはもう、米韓がTHAAD配備で合意してしまっているので再度話し合うというのは難しいでしょう。この局面で決して忘れてはならないことがあります。朝鮮半島を取り巻く強大国がわが国をめぐって角逐を繰り広げたことは旧韓末にもあったということです。

<訳注:「旧韓末」とは、朝鮮王朝が末期に国号を大韓帝国(18971910年)と改めた時期のこと>

そこでは、日清戦争、日露戦争など強大国の角逐がこの朝鮮半島を舞台にこの地で起きたのでした。それによって私たちは国権を失うという痛恨の歴史を体験したのです。そのような悲劇は避けなければなりません。

THAAD配備は、朝鮮半島内でいま一度、強大国の角逐を招き得ます。北の核問題への対応を超えて、民族史、文明史といった大きな観点からも見ていかなければなりません。いったい、どうするのが望ましいのか、ということです。

■拙速でなされた韓米合意
何よりもまず、プロセスや手続きがだいじなのに、朴槿恵大統領は一方的に決めてしまったのです。このような問題は国会の批准が必要です。国会で十分に検討して決めるべき問題なのです。

THAAD配備に関する韓米間の合意自体、非常に性急、拙速でなされました。そのような合意がなされる前に広く議論がなされるべきでした。

北の高高度ミサイルに対し、わが朝鮮半島内で効用があるのか、MDとは別個に韓国が追求してきたK-MDで一部機能を代用できるのか、あるいはMD体制に必然的に編入される効果をもたらすのか、といった点を十分に検討すべきでした。

そして次に、これに対する中国側の反発がないのか、これによって中国、ロシア、北朝鮮が結びつき、それと韓米日が対峙することになる外交状況をどう克服するか、そのような多くのことを検討する必要があります。

■効果にも疑問
THAADの効用は米国においてさえも立証されていません。米国のテキサスにTHAADが配備されたというが、実際そこに配備されたわけではない。配備はできず、ただテキサスにあるというだけなのです。十分に検証されていないから…。

そういうことなのですが、ともかく今は韓米間で話し合いをしたのですが、それなりに効果があるとしてもせいぜい北の核問題に対する国民の不安を心理的なレベルで減らしてやれる程度でしょう。また、北を圧迫する効果があるというなら、その程度は認めることもできるでしょう。

しかし、やはり、あらかじめ検討しておかなければならない部分についての検討は是非とも必要です。

■国会の批准が必要
次にTHAAD配備の場所を星山砲台から星州ゴルフ場に移したことで、いまはもう国会の同意を得る必要性がずっと高まりました。

星山砲台の場合は砲台なのでそう大きな財政負担はない。大きな財政負担がないので国会の批准は必要でないという弁明もあり得ましたが、いまはゴルフ場の買い入れ費用だけで少なくとも1千億ウォンはかかります。

そうなると、重大な財政負担を伴う国際間の合意になるわけです。だから、いまとなってはもう国会の批准が必要です。それを避けるために星州ゴルフ場と軍所有の土地を交換する方式をとったとしても、カネか土地かの違いで財政負担は同じことです。いずれにしても、国会の同意を得るプロセスが必要になります。


――金大中・盧武鉉政権が北にカネをばらまき、それを北が核開発に利用した、といった批判がありました。そのことで北の人権問題には目をつぶった、という批判も少なくありません。

■「ばらまき」批判は通じない
そういうふうに世論を駆り立ててきたのです。しかし、いまとなっては過去10年間の政権は、経済はもちろん安保の面でもまったく無能だったということは多くの国民の知るところとなりました。少なくとも2040歳代はそのような主張をまったく信じません。高齢層の一部はそう信じているが、それもほとんどなくなってきています。

そのことは、(反共か容共かといった)理念論のようなものに取り込まれていないのを見るとわかります。国民はもう、そのような考えに絡めとられることはありません。

「共に民主党」はちゃんとした安保政策体系を持っています。10年間対決一辺倒だった李明博・朴槿恵政権の安保面における無能ぶりとは確実に違う政策を示し、説得できる状況になってきています。

 

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